キャンバスと五線譜

彼女の気持ち

学校が終わると、生徒はそれぞれの練習に励む。

先生に個人レッスンを頼む者。

自分でとことん練習する者。

ひたすら描き続ける者。

自分の部屋にこもり、勉強する者。

そして僕は、どれにも属さずに、自分の部屋でのんびり過ごしているだけだった。


その日も、学校から真っ直ぐ帰ってきて、自分の部屋へ向かっている途中だった。

「祐輔、練習に来たの?」

この声は振り向かなくても分かる。

奈々瀬だ。

「私もこれから練習なんだけど、よかったら一緒に練習しない?」

奈々瀬はいつの時も、僕に気を使う。

「練習しないのは、奈々瀬も知ってるじゃないか。」

「だけどたまには、祐輔のピアノも聴いてみたいな。」

奈々瀬はこういう時、うまいことを言う。


「ね、いいでしょう?」

僕は奈々瀬をちらっと見て、「分かった。」と、返事をした。




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