キャンバスと五線譜
その内僕が中等部に入ると、同級生や先輩の目で視線が痛く食堂の隅っこで、一人で食べる事が多くなっていたっけ。


「ええ?珍しい。日曜日の朝に祐輔に会えるなんて。」

後ろから僕に話しかけてきたこいつは、川合由果と言って、同じ音楽学部ピアノ科に通っている同級生だ。

「そんなにこのフレンチトーストが食べたかったの?」

「そこいらに売っているフレンチトーストよりは、うまいからな。」

「ねえねえ、この後、予定ある?」

「ないけど。」

川合由果は何を思ったのか、僕の隣の席に座った。

「二人でどっか行かない?」

「行かない。デートは一回だけのはずだろ?」

「いいじゃない。」


調度3週間前、一回だけとせがまれて、川合由果と遊園地に行った。

はしゃいでいるのは川合だけで、僕はずっと付き合わされっぱなしだった。

またあれが繰り返されると思うと、具合が悪くなってくる。

「ごちそうさま。」

「あ、ちょっと、祐輔!」
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