キャンバスと五線譜
どうやら、それだけのようだ。

今のところは。

「なあ、想。」

「ん?」

「絵描くの、好きか?」

「なんだよ、突然。」

「なんとなく。」

「ああ、好きだよ。祐輔は?」

「自分?」

「ピアノ弾くの、好きだろ。」

そんな質問、今まではどうでもよかったのに。

「ああ、好きだよ。」

その時は素直に、そう答えられた。

「そうだよな。だからこの学校にいるんだよな。」

僕は自分に、言い聞かせるように言った。

「なんかあったのか?祐輔。」

ヤツは僕の前に来た。

「誰かに認めてもらう為に、いるんじゃないよな。」

僕は不覚にもヤツに、同意を求めてしまった。

「どうかな。」

ヤツの答えは違った。

「少なくとも僕は違うな。」

ヤツは顔つきも違っていた。
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