キャンバスと五線譜

先生の相手

才能って何なんだろう。

そんな事ばかり、考えていた。

母も奈々瀬も、ヤツも、それで輝いているように見えた。

少なくとも、この学校以外の人よりは。

僕は考えれば、考える程に、みんなが可哀想になってきて、父親のやっている事が、分からなくなっていた。

そして、そんな時はなぜか、無性に先生に会いたくなった。

「先生。」

珍しく美術室に、先生の姿はなかった。

この曜日は、必ずいるって言ってたのにな、

ふと準備室から、明かりがもれていた。

きっと、先生はここだ。

ノックをして、ゆっくりと扉を開けた。

「先生?」

部屋に入って一歩進むと、パリっと音がした。

そっと見てみると、ガラスがあった。

そして気付いてしまったんだ。

部屋一面に、ガラスの破片が飛び散っていることを。

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