ラブコール♡ティー
今日は学校がお休みの4月下旬の土曜日。
家で家族団らん、わいわいご飯を食べる……なんてわけにはいかず。
弟の梨弦は朝から部活だし、お父さんは……。
あっ。
そのとき、ふわりとおいしそ〜な匂いが鼻をくすぐった。
こ、これは……っ!!
ぐう、と匂いに刺激されて鳴ったお腹を感じながら、私はくんくんと出どころを探る。
きょろきょろしていると、それっぽいものを見つけた。
いや、間違いない!
「やっ、焼き鳥屋さんだ~!」
木で出来た車風の小さな屋台。掲げられるのれんには、白い文字で『やきとり』と書かれている。
当然私はお金を持っていないので食べられないわけだけど、そんなことも忘れて匂いに釣られ歩き出す。
「うわ~っ、おいしそう~!」
屋台の前まで来てのれんを覗いた瞬間、私は感嘆の声を漏らす。
目の前に現れたのは、たくさんのくし刺し〜!
鶏モモもねぎまもおいしそ〜!
「お嬢ちゃん、食べてくかい?」
そのとき、焼き鳥屋の店主さんと思われる頭にタオルを巻いたおじさんに声を掛けられた。
はい――と答えようとしたとき、私はお金を持っていないことに気が付いた。
うう、ここで食べていかないのは店主さんに申し訳ない……だけど、食べるお金がなーいっ!
にこにこと人のよさそうな笑みを浮かべる店主さんの顔が心に刺さって……い、痛いっ。
なんで私、お金のことを忘れて覗いたりなんかしたんだっ。
どうしたらよいのかとそのたった短い数秒で頭を高速回転させていると……お、お腹がさらに減ってきた~……。
じゃ、なくって!