ラブコール♡ティー




いや、誰!?



全く知らない人おーっ!

しばらくしてから、見知らぬ人は急に足を止めた。
そして手を話したかと思えば、こっちへ振り向く。


その顔には白マスク、目元も見えないサングラスが掛けられていた。

すっごい不審者感満載!! って思うのは、失礼か……。

しかし、いったい私に何の用が……と思ったら、さっきの焼き鳥の入ったビニール袋を私に突き出してきた。




「やる」

「……え、私に?」



予想外の展開に私は思わず聞き返すと、男の人はうなずいた。

いや、表情がまるでわからないんですけど……。



「ほら、受け取っておけ」

「あ、ありがとうございます……」



私は不思議に思いながらも、そう言うならとありがたく袋を受け取った。

ふわりと焼き鳥のいい匂いが香る。

男の人は私が受け取ったのを確認して、さっさと歩き出す。



「あ、ありがとうございますっ! でもあの、なんで、私にっ?」



向けられた背中に思い切って問いかけると、男の人は立ち止まった。



「……別に、理由はない」



それだけ言って、今度こそ本当に行ってしまった。


な、なんだったんだ……。

腰が抜けそうになるのをこらえながら、私は言葉も出ない思いで小さくなる背中を見送る。


ぐう、と私を現実に引き戻すようにお腹の音が鳴った。



< 6 / 14 >

この作品をシェア

pagetop