乙女要素のある死にゲーに転移してしまった件
6.感覚派と理論派
森を抜け、難なく村に到着。
マリエがいた街ほど活気はないが、村人たちの談笑があちこちから僅かに聞こえてくることから、寂れてはいないようだ。
「アズミ様は村長の家に住んでいます。行きましょう」
1番大きな家を指差し、イナトは歩き出す。
家が大きいのは、誰でもこの村に住めるようにと村長が考えた案らしい。
宿屋を経営できるほど外部から客は来ない。
しかし、周りは危険が多い。流れ着いた人は永住することが多いため、そのようにしているとか。
「こんにちは。アズミ様は部屋にいますか?」
「ああ、イナト様。はい。相変わらずアズミは部屋にこもってますよ。……ところで、その方はもしや新しい救世主様ですか?」
「あ、はい! 凛です。今日はアズミさんに会いに来ました」
「それはそれは。アズミが力になれることがあれば良いのですが……」
苦く笑うところを見ると、マリエの言う通りアズミはあまり社交的ではないのだろう。
村長の家で暮らしている人々へ挨拶を交わしながら奥の部屋へと進み、イナトはドアをノックする。
物音がした後、聞き取れないほどの小声が聞こえたかと思えば、ゆっくりと扉が開く。
扉に隠れるように顔だけ覗かせたアズミはイナトを見て気まずそうな表情を見せる。
「イ、イナト……」
「お久しぶりです、アズミ様」
「様はもう、いらないよ。わたしはもう救世主じゃない」
「……そうですね。では、アズミ。新しい救世主様が貴女に会いたがっているのですが、会っていただけますか?」
「……すでにそこに居るのに会わないって言えるわけないでしょう?」
「はは、確かにそうですね」
アズミが扉を大きく開き、私とイナトを部屋へ招き入れる。
「何しに来たのか知らないけど、わたしは何もわからないから。……死にゲーとか大体クリアする前に飽きるし無理ゲーなのわかって買ったわたしが悪いんだろうけど」
後半から小さくなっていく声。表情は固く、あまりこちらを見ようとしない。
アズミは長くて黒い髪で赤い目。マリエいわく、失礼だけどちょっと不気味。でも、顔は可愛く作ってる。とのこと。
アズミはこちらをチラリと見た後すぐに目を背けた。
服は黒いジャージのようなものを着て体操座りをし、距離を置くように隅にいる。
「数年間ここにいたらしいですけど、周辺の探索はされていたと聞きました。何かありましたか?」
そう問いかけてみると、アズミは俯いたまま話し始めた。
「…………敵はアンデット系と盗賊系が多かったです。村の近くに配置されているデカい奴は正直最初に戦うべき相手ではないです。ドロップ品も美味しいとは言えませんし。ただ、動きは遅いので時間をかけて戦えば死にゲー得意な人は勝てなくもない、です。あと――」
どんどんと出てくる情報。しっかりと探索をしていたんだなと思う量に、私はマップにピンをつけたりメモを取ったりと大忙しだ。
「かなり詳しいじゃないですか。これなら探索捗りそうです。ありがとうございます!」
「はぇ……。いや、あの、とは言っても、わたしが力になれるのはここまでですよ。もっと奥のことは知りません」
感謝の言葉を述べると、アズミは頬を赤らめ動揺を見せた。
その時に初めて目があった。
「これだけ教えてもらえれば序盤楽できそうですし十分です。むしろなぜここまで知っていて辞めてしまったのですか?」
「……こ、怖くて」
「え? でも、敵のドロップ品まで把握してますし」
また目を逸らされてしまった。
だが、マップ上に配置されている強敵ともやりあえているのならもっと前に進めていただろう。
見た目の怖いタイプがいても、立ち回り自体はできているのではないだろうか。
「あ、わたしのスキル、情報開示系なんで……。ステータスはもちろん弱点属性とかも瞬時にわかります」
「すごい! ギミック解除とかも得意と聞いたんですが、スキルで答えがわかるんですか?」
「答えまではわからないです。でも、ヒントが貰えますし、わたしはそっちの方が元々、得意なので」
「へぇ〜。私はそこらへん全然ダメで……。戦闘は身体で覚える派ですし、ほんとすごいです」
すごいすごいと褒めまくる私に、アズミは茹でダコのように顔を真っ赤にして「いや、そんなことは」と手で顔を覆い黙ってしまった。
沈黙が続いた後、これ以上話すことは何もないと言われてしまい、アズミの部屋から渋々退出することに。
「……イナトさん、2人とも戦闘向きじゃないですね。スキルも攻撃系はないみたいですし」
「そうですね。……リン様のスキルは攻撃系でしょうか?」
「そういえば確認してなかったですね」
ステータスを開いてスキルの項目を確認する。
1つは回避のタイミングを知らせるあの音。次に弱点部位の透視。他にパリィのタイミング緩和。
まだ様々なスキルを取得できるようだが、レベルアップや召使からの購入が必要なようだ。
それらを説明すると、イナトは目を輝かせた。
「攻撃系のスキル持ちで、まだ取得できるものがあるのですね! リン様は度胸もありますし、世界救済も夢ではないかもしれませんね!」
一緒に世界を救いましょう! と世界救済まで着いてきそうな発言。レベリングや探索、この人がいて大丈夫なのかなと一抹の不安が心をよぎったのだった。
マリエがいた街ほど活気はないが、村人たちの談笑があちこちから僅かに聞こえてくることから、寂れてはいないようだ。
「アズミ様は村長の家に住んでいます。行きましょう」
1番大きな家を指差し、イナトは歩き出す。
家が大きいのは、誰でもこの村に住めるようにと村長が考えた案らしい。
宿屋を経営できるほど外部から客は来ない。
しかし、周りは危険が多い。流れ着いた人は永住することが多いため、そのようにしているとか。
「こんにちは。アズミ様は部屋にいますか?」
「ああ、イナト様。はい。相変わらずアズミは部屋にこもってますよ。……ところで、その方はもしや新しい救世主様ですか?」
「あ、はい! 凛です。今日はアズミさんに会いに来ました」
「それはそれは。アズミが力になれることがあれば良いのですが……」
苦く笑うところを見ると、マリエの言う通りアズミはあまり社交的ではないのだろう。
村長の家で暮らしている人々へ挨拶を交わしながら奥の部屋へと進み、イナトはドアをノックする。
物音がした後、聞き取れないほどの小声が聞こえたかと思えば、ゆっくりと扉が開く。
扉に隠れるように顔だけ覗かせたアズミはイナトを見て気まずそうな表情を見せる。
「イ、イナト……」
「お久しぶりです、アズミ様」
「様はもう、いらないよ。わたしはもう救世主じゃない」
「……そうですね。では、アズミ。新しい救世主様が貴女に会いたがっているのですが、会っていただけますか?」
「……すでにそこに居るのに会わないって言えるわけないでしょう?」
「はは、確かにそうですね」
アズミが扉を大きく開き、私とイナトを部屋へ招き入れる。
「何しに来たのか知らないけど、わたしは何もわからないから。……死にゲーとか大体クリアする前に飽きるし無理ゲーなのわかって買ったわたしが悪いんだろうけど」
後半から小さくなっていく声。表情は固く、あまりこちらを見ようとしない。
アズミは長くて黒い髪で赤い目。マリエいわく、失礼だけどちょっと不気味。でも、顔は可愛く作ってる。とのこと。
アズミはこちらをチラリと見た後すぐに目を背けた。
服は黒いジャージのようなものを着て体操座りをし、距離を置くように隅にいる。
「数年間ここにいたらしいですけど、周辺の探索はされていたと聞きました。何かありましたか?」
そう問いかけてみると、アズミは俯いたまま話し始めた。
「…………敵はアンデット系と盗賊系が多かったです。村の近くに配置されているデカい奴は正直最初に戦うべき相手ではないです。ドロップ品も美味しいとは言えませんし。ただ、動きは遅いので時間をかけて戦えば死にゲー得意な人は勝てなくもない、です。あと――」
どんどんと出てくる情報。しっかりと探索をしていたんだなと思う量に、私はマップにピンをつけたりメモを取ったりと大忙しだ。
「かなり詳しいじゃないですか。これなら探索捗りそうです。ありがとうございます!」
「はぇ……。いや、あの、とは言っても、わたしが力になれるのはここまでですよ。もっと奥のことは知りません」
感謝の言葉を述べると、アズミは頬を赤らめ動揺を見せた。
その時に初めて目があった。
「これだけ教えてもらえれば序盤楽できそうですし十分です。むしろなぜここまで知っていて辞めてしまったのですか?」
「……こ、怖くて」
「え? でも、敵のドロップ品まで把握してますし」
また目を逸らされてしまった。
だが、マップ上に配置されている強敵ともやりあえているのならもっと前に進めていただろう。
見た目の怖いタイプがいても、立ち回り自体はできているのではないだろうか。
「あ、わたしのスキル、情報開示系なんで……。ステータスはもちろん弱点属性とかも瞬時にわかります」
「すごい! ギミック解除とかも得意と聞いたんですが、スキルで答えがわかるんですか?」
「答えまではわからないです。でも、ヒントが貰えますし、わたしはそっちの方が元々、得意なので」
「へぇ〜。私はそこらへん全然ダメで……。戦闘は身体で覚える派ですし、ほんとすごいです」
すごいすごいと褒めまくる私に、アズミは茹でダコのように顔を真っ赤にして「いや、そんなことは」と手で顔を覆い黙ってしまった。
沈黙が続いた後、これ以上話すことは何もないと言われてしまい、アズミの部屋から渋々退出することに。
「……イナトさん、2人とも戦闘向きじゃないですね。スキルも攻撃系はないみたいですし」
「そうですね。……リン様のスキルは攻撃系でしょうか?」
「そういえば確認してなかったですね」
ステータスを開いてスキルの項目を確認する。
1つは回避のタイミングを知らせるあの音。次に弱点部位の透視。他にパリィのタイミング緩和。
まだ様々なスキルを取得できるようだが、レベルアップや召使からの購入が必要なようだ。
それらを説明すると、イナトは目を輝かせた。
「攻撃系のスキル持ちで、まだ取得できるものがあるのですね! リン様は度胸もありますし、世界救済も夢ではないかもしれませんね!」
一緒に世界を救いましょう! と世界救済まで着いてきそうな発言。レベリングや探索、この人がいて大丈夫なのかなと一抹の不安が心をよぎったのだった。