この愛には気づけない

7   おせっかいな性格 ①

「とにかく、その子に接触すれば良いのね?」
「接触とまではいかなくてもいいけど、助けられるなら助けてやってくれ」
「何らかの形で関わらないと助けるなんて無理でしょう」
「お前は加害者側をこてんぱんにしようとするから、好戦的になるだろ。遠巻きに見ていて、これは酷いと思った時には知らんふりはしないでくれってことだよ」
「難しいことを言うわね」

 哲平としては、気にかけてあげてほしいと言いたかっただけらしい。
 私は面倒くさがり屋だが、おせっかいなところもある。あとで、面倒くさい気持ちになる時もあるけど、弱いものいじめが大嫌いなのだ。
 しかも、好きでもない人間に暴言を吐かれても、寝たら忘れるタイプでもある。

 それにしても、哲平が女性を気にするなんて珍しい……、と思ったけど、そうでもなかった。哲平も正義感が強いタイプなので、弱いものいじめは大嫌いなのだ。
 彼は学生時代から勉強はそこそこできたし、スポーツは全般的に得意だった。一部の男子からの嫉妬はあったものの、いじめられるようなタイプじゃなかったし、ヤンキータイプの人間ともうまくやっていた。
 だから、上手くいじめをなくす方向に持っていっていたのよね。

「わかった。不自然に思われないように動くわ。……というか善処する」
「なんか心配になってきた」
「失礼ね!」

 現在、一人で暮らしているマンションの前まで送ってもらったあとは、夜も遅かったので、そのまま別れた。時間が早ければ、哲平は私の部屋に足を運んで、話し込んだ時は泊まっていく。

 実家までは徒歩で十分ほどなので、帰れないこともないのだが、男性の影があったほうが良いと言うのだ。それなのに、彼氏を作ろうとすると、不機嫌になるのだから困ったものだ。シスコンにも程がある。

 哲平から家に帰ったとの連絡があったあとは、冷蔵庫の残り物を使って、今日の夕食を作ることにした。

******

 次の日、休日出勤をしたところ、当たり前だが、オフィス内はほとんど人がいなかった。

「おはよう」
「おはようございます」

 すでに出勤していた部長に挨拶を返すと、他に誰もいないのか確認してみる。すると、昨日、話題に上がっていた中野さんが、自分の席でパソコンに向かって、難しい顔をしているのが見えた。
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