『勘』

「勘です」
 そう答えた、彼をそこにいた会社の全員が笑いました。
「君、馬鹿なことを言わないで、エビデンスを出したまえ。子供じゃないんだから」しかし、彼の理屈はこうでした。
『勘とはイメージであり、絵である。言葉と絵の関係。まず、絵は言葉の上に立つということを知っておかなければならない。
 たとえば、縄跳びが跳べないとき、どうしたら跳べるかを、言葉でもってゆっくり理解していく必要がある。言葉は絵に到達する梯子にすぎない。
 そして最後、『跳べている』ときには、言葉を抜け、絵に身体が倣うというのが、運動の法則、物の道理であるから、僕が「勘です」と言ったとき、本来、それは喜ぶべきはずのことなのである。僕には絵が先に見えたのだから』
「かしこまりました。すぐに証拠を提出致します」
 最初から、縄跳びが跳べる人もいれば、跳べない人もいるから、跳べる者は、跳べない者へ手ほどきをしてやるのも、また道理である。
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