曖昧ハート
「ねぇ、村田から見て私ってどんな女?」
どうして、あんな扱いを受けにゃならんのか。と思って村田に思わず聞いてしまった。貴ちゃんにああやって殴られるのは私に原因があるのかなって。
「どんなって……。中身おっさん?」
「おい」
「実際おっさんじゃん」
「否定はしないけど」
失敬な発言をする村田に笑いながら軽くツッコむ。
わかってるよ。中身おっさんなのは。ちゃんと自覚してる。しかし、聞きたいのはそこじゃない。
「そうじゃなくて女としてよ。どう思う?」
「さぁ……。聞かれても。女として見たことがないし」
「はい?全く?」
「ない。男友達と同類」
「えー。全然?付き合おうって言ったら?」
「無理」
座卓にコトンとお皿を置き、私にキッパリ言い切る村田。
こいつ……!スパッと首を横に振って失礼な。分かっていたことだけど、ハッキリ言われると何だか無性にモヤつく。
「ちょっとくらい何かあるでしょ」
「ないね。見た目も中身も花音は俺のタイプじゃない」
「何それ。その眼鏡、度数が合ってないんじゃないの」
「あ、おい」
「ちょっと貸して」
ぶつぶつ言いながら村田の隣に座り、眼鏡を外す。レンズを見てみれば、結構度数がキツイ。
“うっ”と目を細めつつ、顔を上げて目付きの悪い村田と視線を重ね合わせる。
子供の頃と大して変わりのない村田の顔。
それでもやっぱり大人と言うか、ちゃんと男だ。
ちょっと恥ずかしい。眼鏡越しじゃない所為かいつもと違う。村田のようで村田じゃない。