曖昧ハート

 「……なに?」

 「いや。村田も男なのねと思って」

「は?」

「そう言えば、私、村田のことが好きだった時期があったわ」

 「いつ?」「小4くらい」


 首を傾げた村田にポツリと零す。子供の頃の淡い気持ち。好きだった理由なんて“優しい〜”とか、そんな単語1個しか出てこない。だけど、私、目を細めてるこの顔が確かに好きだった。スッカリ忘れてたけど。



 「ふーん」
「どうする?焼け木杭に火でも点けてみる?」「はぁ?」
 「今頃、彼氏もギャルと密会ナイトパーティーの真っ最中だし。こっちもこっちで楽しもうよ」


 バカなことを言って離れようとする村田にジリジリ近寄る。

 アルコールの所為。貴ちゃんだって浮気してるし、お相子。なんて言い訳を頭の中で考えてる時点で私も結構悪い女だ。

 適当なこと言ってるけど、本音を言えば興味本位。友情の壁を超えたら村田がどう変わるのか見てみたい。

 それに半ば自棄もある。向こうもやってるし、私もって。

 いーや、全部言い訳。好きな気持ちを思い出したら無性にちょっかいを掛けたくなった。これぞ正に動物の本能。
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