曖昧ハート
「わかったから。ヤメろって」
「なんで?」
「触わんな」
「いいじゃん」
「よくねーし」
壁にぶち当たって逃げ場が無くなった村田を捕まえて、頬っぺたをツンツン突っついてみる。
なーんだ。女として見れないなんて嘘ばっかり。村田ってば、すっごい恥ずかしそうだ。照れた表情をしてる。
あー、やばい。何年振りだろ。この感覚。新鮮だ。可愛いかも。
小学生の頃の村田を思い出す。“遊ぼー!”ってしがみついたら“触わんな!”照れてた村田。
懐かしい…。あれも好きだった。とにかく当時は村田が凄く好きだった、なんて思ったら歯止めなんか利きやしなくて。
戸惑う気持ちは置き去りにキスしてしまった。自分でもビックリ。
「……意味わかんねーし」
「嫌だった?」
「別に嫌じゃないけど」
「恥ずかしい?」
「マジで恥ずい」
口ではぶっきらぼうに言いつつも、村田は素直に答えて頬を染める。
拗ねたように俯いちゃって可愛い~。ツンデレみたい。しかしまぁ、幾ら何でも照れ過ぎでしょ。お酒の所為?いや、単に照れ屋なのか。
意外な反応だ。悪くない手応えについつい調子に乗る。
「可愛いやつめ」
照れてる村田が可愛くて、ケラケラ笑いながら負ぶさるように抱き着く。
なるほど。これが浮気真っ只中の貴ちゃんの気持ちか。
何となく分かった。浮気したって別に抵抗も無ければ、罪悪感も無い。本能の赴くまま。とにかく“したい”だ。
現に今だって貴ちゃんの顔なんて思い浮かばない。村田の顔しか見えてない。