曖昧ハート

 「昨日のアレはいったい何だったの?」
 「いきなり女を出されて爆発した」
 「ほほーう」
 「ごめん。彼氏がいるのに」
 「いいよ。その彼氏も今頃他の女と裸でイチャイチャ中だから。気にしなくてオッケー」
 「バカじゃん。早く別れなよ」


 大真面目にふざけて答えた私に村田は眼鏡の位置を正して苦々しい笑みを零す。

 いつもなら即答で“それが出来れば……”って返すところだけど、何だか言う気になれなくて「はは……」と誤魔化すように笑った。


 心の中の温度が平温って感じ。ちょっとだけ、そうした方がいいのかなって考えている。


 だって何の抵抗もなく貴ちゃん以外とヤれる自分がいた。

 本当に好きだったらさすがにしてない。開き直るには充分過ぎる。


 「朝ご飯食べる?」
 「食べる~」


 戸惑う私の気持ちは置き去りに、村田はすっかりいつもの村田だ。

 何も変わりない。さっさと服を着て、キッチンの奥に消えていった。

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