曖昧ハート
「にゃー」
代わりに村田の猫が来て、珍しく私にゴロゴロと甘える。無防備に寝転がっちゃって村田に甘えるときのよう。
転がる度に“リンリン”と鈴の音が鳴る。
珍しい。いつもなら私を見たって知らんぷりするのに。私から村田の匂いでもするんだろうか。
くっついて寝てたし。なんてことを考えながら服を着てたら電話の着信音が鳴った。
私のスマホだ。しかも着信相手は貴ちゃん。
「うわぁ……」
村田の家にいるときに電話が掛かってくることって今まで何度もあったけど、状況が状況なだけに気まずい。ちっぽけな罪悪感に包まれる。
しかし、出るか一瞬迷った末に電話に出た。出なかったら怒るんだもん。寝てたってヤツは怒る。
『今どこ?』
出た瞬間、“もしもし”と言うよりも早く私の居場所を聞いてくる貴ちゃん。
いつも通り。耳を澄ませば、後ろでクスクス笑うギャルの声。
“あ、やっぱね。そちらも昨夜は随分とお楽しみだったようで”……と呆れつつ、膝に乗ってきた猫の頭を撫でる。
浮気相手の前で堂々と掛けてくるなよ。せめて帰ってからにしろ、と苛つく。
いや、でも、お互い様か。私だってまだ浮気相手と一緒だ。そう思ったら許せる私がいるんだから笑えない。