曖昧ハート
演技
ギシギシとベッドが音を立てる。
「……痛い。もうヤメて」
恨みを込めて言った言葉は貴ちゃんに届きそうもない。
やるせない気持ちでいっぱいになり、ぼんやりと白い天井を見上げる。
貴ちゃんが家に来てすぐ。彼は部屋に入って来るなり“目付きが気に入らない”と言って私の脇腹に蹴りを入れた。
態度や発言が気に入らないと言って殴られることは多々あったけど、目付きを指摘されたのは初めて。
困惑したが、貴ちゃんはとにかくブチ切れで話もままならず。訳もわからないままボッコボコに殴られ、終わったと思ったら次は無理やり行為に及ばれた。
家に来た理由もわからないし、何なのこれ。まさかしに来ただけ?
「花音っ」
「う、うん……」
「お願いだから別れるとか言うなよ…っ」
殴られてる最中に別れるとか言っちゃった所為だろうか。貴ちゃんはとにかく私を逃すまいと必死だ。
ヤれば機嫌が取れるとでも思っているのか、繋がりを感じたいのか、熱心に腰を振っている。
怒りが全部、性欲に向いた感じ。
ただ心が冷え切ってる所為か今までは気持ち良く感じていたそれも苦痛。
お付き合い程度に声は出しているものの、何も感じない。