曖昧ハート


 「ねぇ、何か用事があって家に来たんじゃないの?」


 保冷剤で頬を冷やしながら恐る恐る貴ちゃんの顔を覗く。そうだ。殴られたり無理強いされたりでスッカリ疑問が抜け落ちてたけど、そもそも私の家に来たのはどうして?

 1時間後に家に行くと電話を切られて、来るなりこんな感じで結局何の話もしないまま。気付けば時刻はすっかり夕方だ。

 あまり刺激したくないのが本音だけど、さすがに来た理由が気になる。ボコボコに殴られたし。火を点けるような何かがあったんじゃないかと思う。


 「いや。俺ん家の近所のマンションに花音が入っていくを見たってツレが言ってたから」
 「え…」
 「お前の同級生の家ってそこかなって」
 「あ、あぁ…」


 いったい何を聞きたいんだか、貴ちゃんは嫌な質問を私に浴びせながら呑気にヘラヘラと笑う。機嫌は悪くなさそう。しかし、聞かれた内容が内容なだけに生きた心地がしない。顔が引きつる。

 やばい。どうしよう。何かバレた?村田と一緒に居るところを誰かに見られたとか?後ろめたいことがありまくりなだけに焦る。

 やってることは貴ちゃんと一緒なのに罪悪感が半端ない。
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