曖昧ハート
「どんなやつ?」
「えー。ゲーマーの眼鏡っ子かな」
「大人しい感じ?」
「うん。まぁ…」
「卒アルとかねーの?」
「ごめん。ないや。実家に置いてある」
興味津々に聞いてくる貴ちゃんの質問を胃がひりつく思いで躱す。相手は女の子だと勘違いさせてただけにバレたときが恐ろしい。事実を知ったらキレにキレまくって村田の家にまで乗り込んで行きそう。
そうなったら終わりだ。貴ちゃんのことだから絶対に村田を殴るに決まってる。即様、歯抜けの村田が出来上がり。
いや、そんなの無理。頼むから忘れろ。卒アルになんて興味を持たないで欲しい。
「見たいから取ってきて」
「いやー、ドコに片付けたのかわからないし」
「探せば部屋のどっかにはあるだろ」
「そうだけど。探すのに時間が掛かるから」
「ふーん」
「今度、実家に帰った時に探しとく」
またキレられたらどうしようって内心ヒヤヒヤしながら遠回しに逃げまくる。
ぶん殴られるかもと身構えたが、そこは別に心配する必要はなかったみたい。機嫌良くゲームをやり始めたところを見ると貴ちゃんの怒りは既に収まってる。
ただ何も問題がないとは言い難い。だって、これ、絶対に疑いみたいなのを持ってるでしょ?わざわざ聞いてくるくらいだから。
困ったなー。どうやって誤魔化そう……。眼鏡っ娘の女友達とか居たっけ?とまで考える。
貴ちゃんの方は堂々と浮気しているのに、だ。必死こいて隠して何だかバカみたい。
そう思ったけど、それ以上は考えないようにした。
考えれば考えるほど、気持ちの収まりがつかなくなりそうで――。