曖昧ハート

兄貴




 「うーわ。また派手にやられたなぁ…」


 次の日。実家に帰宅にしてリビングでキューピーと戯れてたら、3番目の兄貴……光弥(みつや)が帰ってきて苦々しく笑った。

 持って帰ってきた袋にジャーキーが入ってることに気づいたキューピーが、私の傍から離れて嬉しそうに兄貴の方へ飛んでいく。


 光弥は警察官をやっていて背が高くマッチョ。腕とかムキムキで見た目通り格闘技が趣味。

 今日は非番だから友達と買い物に行ってたらしい。


 「もー、やだ。兄貴。あの人、逮捕してよー!」
 「お、珍しい。この間まで聞く耳を持たなかったのに」
 「いい加減、目が覚めたの。だから逮捕!」


 なんて泣き言を言いつつ、キューピーと一緒にゴロゴロ寝転がりながら光弥の脚に纏わりつく。

 気が抜けちゃったのか精神年齢が下がりまくり。

 やっぱり実家は落ち着くわー。キューピーもいるし。帰ってこようかなー。と、気分はすっかり末っ子モード。

 本当は和んでなんかいられないんだけど。


 「やーば。めっちゃ寝たわ」


 そうこうしているうちに部屋で昼寝をしていた4番目の兄貴……志郎(しろう)も階段から下りてきた。

 呑気に体を伸ばして冷蔵庫の中のお茶に手を伸ばしてる。しかし、私の顔を見た瞬間、ビクッと肩を揺らした。かなり驚いている。



 「おい……。その顔どうした?」
 「愛しのダーリンにやられた」
 「バチボコだろ。焦るわー。ビビったし」
 「はは…」
 「エグ〜」


 本気でビビられて乾いた笑いしか出ない。

 ま、仕方がないか。今の私の顔は痣だらけの腫れだらけでパッと見、お化け。そりゃ兄貴達も驚くってものさ。


 こんな状態だからバイトも強制的に休みになったし。

 一応、働く気満々で出勤したものの、私の顔を見た店長が“今日は休んでいいよ”と苦笑いして帰してくれた。

 普段、働きまくってるだけあって、その辺みんなわりかし寛大。ありがたい。

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