曖昧ハート


 まぁ、確かに。光弥の言うとおり。少し前まで『絶対に別れたくない』と言っていたんだから、それを思えば少し進歩したと思う。

 その成長したキッカケが村田との浮気だと思うと、なかなか複雑だけど。言わなきゃ兄貴達には、わかりっこないことだ。


 「もっと他にいいヤツがいるだろ」
 「そうそう。村田とかな」
 「また言ってらぁ」
 「だって、あいつイイ男だろ」
 「なー。いいじゃん。村田。性格もいいし」


 志朗と光弥が隣に座ってゲームのスイッチを入れながらヘラヘラと言う。

 兄貴たちは昔から村田推しだ。子供の頃から何かにつけては村田と私がくっつく説を推してくる。


 まぁ、兄貴たちからしてみても村田は昔なじみの友達だし。私が村田を好きだった時期って兄貴たちにもよく遊んで貰ってたから。そのときの村田ラブな私の思い出が強いんだろう。

 妹の友達って位置にいたけど、村田は性格的にも兄貴たちと合ってたしね。上の兄貴たちより歳の近い2人からすれば弟みたいな感じなのかも。

 それこそ再会したって話をしたら大盛り上がりで、実家に来る度に村田の話題が出てくる。


 その村田と私が友達の一線を超えたと知ったら、兄貴たちのテンションは凄まじいことになりそうだ。

 きっと永遠にネタにされるし、熱烈な付き合えコールが始まる。

 私はそうなっても別に構わないけど、村田はメチャクチャ困るだろうから、兄貴たちには黙っておこう。

 この先、付き合うこともなさそうだしなー……。私と付き合えるか聞いたときも『無理』って言ってたし。

< 28 / 89 >

この作品をシェア

pagetop