曖昧ハート

 「しょうがないなー」
 「頼んだぞ」
 「はいはい」


 リビングを出ていく兄貴たちに手を振り、村田に電話を掛ける。すると村田は3コールくらいで出た。この早さはやっぱり家でゲームをしていたに違いない。

 そう核心を持ちながら兄貴に言われたとおりに村田を実家に誘う。


 『わかった。今から行くわ』
 「んー。待ってる」
 『ちなみに昨日のことだけど……。兄貴たちに話した?』
 「言うわけないじゃん」
 『そっか。なら、いいや』


 兄貴たちにバラされていないか心配したのか、村田が電話口で確かめるようなことを言う。

 だから「心配しなくても言わないって」とクスクス笑いながら言った。

 そしたら『別に言ってもいいよ』と思いも寄らなかった答えを返されて逆に困る。

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