曖昧ハート
「えぇっ?言ってもいいの?」
「いいよ」
「なんで?」
「事実だから」
驚いて声がひっくり返った私に村田はあっさりとした口調で返してきた。
おぅ。確かに事実だけども。そんなあっさりと許可を出しちゃっていいのかね?これで私が本当に喋ったら間違いなく兄貴たちから、おちょくられまくるのに。
「本当に言っちゃっていいの?」
「だって隠すのってしんどいでしょ」
「おぉ、さすが村田。自分の行動に責任が取れる男」
「責任が取れてるかは怪しいところだけどね」
しみじみと呟いた私に村田は呆れたように言った。村田ったら本当に人がいい。からかわれる未来よりも相手を思いやるなんて。
しかし、バレても別に構わないと思ったら気が楽。心の中に潜んでいたモヤモヤがスッキリと消え去った。
まぁ、それで皆に話すかといえば、そこは言わない。
わざわざ報告することでもないだろうし。貴ちゃんと付き合っている今、言うべきことでもないだろうから。
「わかった。そのうち切り札のように言うわ」
『そこは普通に言ってよ』
「冗談だって」
『ならいいけど』
「とにかく待ってるわ〜」
和やかに話を終わらせ、村田との電話を切る。
心どころか体まで軽くなった気分でキッチンに行き、タコパの準備。しかし、食器棚のガラスに映った自分を見て“しまった”と少しだけ後悔した。
だって今の私、顔面がオバケだし。村田は見慣れてるけど、浮気をした後なだけに気まずい。気を使わせてしまいそう。