曖昧ハート
「ドッジボールでもする?」
「しないし」
「じゃあ、缶蹴り」
「なしだって」
「なら鬼ごっこかかくれんぼは?」
「いやいや。いったい何時だと思ってんの」
無邪気に遊びを提案した私に村田はビシッと大人な対応で返してくる。確かに時刻は23時を超えようとしているけども。
楽しかった思い出が頭の隅っこでチラついて消えない。外に出て何かしたいって気分だ。
「んじゃ、肝試しは?」
「ヤメとけ。昨今は不法侵入ですぐにお縄だぞ」
「えー。ちょうどオバケみたいな顔だし、誤魔化せるくない?」
「自虐すんなって」
兄貴たちにまで止められ、ちょっと拗ねる。缶酎ハイを手に持ち、肩を丸めてしょんぼり。
そしたら村田が口を押えてふっと小さく笑った。目から入ってくる情報と耳から入ってくる情報のギャップが激しすぎ、って。
「拗ね花音だ」
「だって遊んでくれないんだもん」
「わかったよ。そんなに出かけたいなら、アイスでも買いにいく?」
「行くー!」
村田の提案にすっかりご機嫌で立ち上がった私。兄貴たちが「ビール!」と、ついでに買ってこいと言わんばかりに叫ぶ。