曖昧ハート

 そもそも本来の私はこんな従順なタイプじゃない。


 そりゃ見た目は確かに清楚で大人しい感じに見せてる。

 髪は美容院でマメに手入れをしてるし、肌もエステに通ってるお陰で艶々。服装もコンサバな感じにして持ち物だって流行りの物で揃えてる。


 だけど、実際は違う。我侭でガサツで負けん気が強い。中身おっさん。


 なんてったって5人兄妹の末っ子、女1。愛読書は週刊誌。好物はシシャモ。宝物は入手困難と名高いプレミア芋焼酎。尤も愛するものは実家のアイドル、土佐犬のキューピーだ。

 一言で言えば渋い。兄貴達なんて、女らしさはどこに落っことしてきた?って私にしょっちゅう聞いてくる。


 甘くて可愛いスタバのプラペチーノより、近所の喫茶店のマスターが淹れたブラックコーヒー派。恋愛映画より任侠映画の方が好き。

 散々好きだと公言してる、流行のファッション雑誌も、お洒落なランチも、可愛いカクテルも、流行りの歌も、本当はぜーんぶ興味が無い。


 それでも好きな振りをしてるのは貴ちゃんがそういう女が好きだからだ。

 文句を言わないのは拳が飛んでくるから。


 そう。貴ちゃんは世間一般で言うところのDV男だから。殴られたくなかったら逆らわずにひたすら我慢するしかない。

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