曖昧ハート

 「あぁ、何だっけ?花音の彼氏の……貴ちゃん?」
 「うん」
 「アレの友達かぁ」


 ぽいわ〜。そんな感じ〜。あいつ、こんな感じのツレが多いよね〜。と、兄貴はギャルの姿を上から下までマジマジと見る。

 めちゃくちゃ失礼。品定めでもしているみたいだ。見られている女の子も気まずそう。本当は浮気相手なわけだし。


 「君も気ぃ付けなね。あの男、基本的に頭のネジが足りてねぇから。いつか、こいつみたいにボコボコにされるかもよ」

 「は、はぁ……」

 「だって、見ろよ。これ。すげぇ顔になってるだろ?毎度ここまでやっておいて、別れたくなーい!って泣いて土下座までするからね、あいつ」

 「え…?そう、なの……?」

 「マジマジ。半べそで実家の前を彷徨うろついてたこともあったし。そのくせ、怒鳴ったらビビってぴえーんって雑魚ムーブをかますからな」


 “お前の彼氏マジで変”と兄貴は私の背中をバシバシと叩きながら、漫画に出てくるキャラのように“ガハハ”と盛大に笑う。

 つられて“あはは”なんて乾いた笑い声をあげたけど、内心修羅場だ。


 兄貴ってば失礼な上に圧が過ごすぎ。お前が特別なわけじゃないと牽制しつつ、ちゃっかり貴ちゃんの評判を下げようとしている。

 この様子だと、この子が貴ちゃんの浮気相手だとわかってるっぽいなー。わかった上でペラペラ話しているに違いない。

 敵はコッチじゃなくて向こうだぞ、と誘導。絡まれた女の子の方も苦笑い。
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