曖昧ハート

愛の果て




 「花音さん、やっと痣が引いてきましたね」
 「まぁね。またすぐ妖怪に戻るかもだけど」
 「毎度、そこまでボコるなんて鬼っすね、彼氏」


 タコパから数日経った、夕暮れ時。職場のレストランの休憩室で仕事を終えた仲間と軽口を叩く。あれから私は自分の家に帰らず、実家で寝泊まりしている。上げ膳、据え膳でゆっくり療養。その甲斐もあってかオバケみたいに腫れてた顔もマシになり、やっと出勤することが出来た。まだ薄っすらと痣が残っているけど、まぁ、形容範囲だ。メイクをすれば、そんなに目立たない。


 「しかし、大丈夫なんですか?彼氏からの連絡を無視して」
 「んー…、あんまり大丈夫じゃないかも……」


 心配そうに顔を覗き込んできたバイトの女の子に、苦々しい笑みを返す。


 そうだ。正直、かなりマズイ状況なんだよね。あの日からずっと貴ちゃんの電話を無視しまくってるし。

 アドレスも変更して、ラインもブロックして、徹底抗戦ならぬ徹底逃亡。

 家にも帰っていないから、貴ちゃんは私と全く連絡がつかない状況だ。きっと気持ちのぶつけ先がなくて、怒りは相当溜まっているだろう。
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