曖昧ハート
村田
「別れりゃいいじゃん。そんなクズ」
「それが出来れば苦労はしない」
「……アホの極みだね」
ふわふわパーマの黒髪の青年が眼鏡越しに私を憐れむような目で見る。
貴ちゃんに追い出された後。マンションを出て数分の場所にある友達の村田の家にきた。
パソコンとゲーム環境が整った、一人暮らしにはちょっと広めのマンション。村田の飼っている三毛猫が“リンリン”と鈴を鳴らしながらパソコンの前を横切っていく。
ゲーマーの村田は正にゲームの真っ最中だったけど、ドアを開けるなり「泊めて〜」とヘラっと笑った私を「しょうがないな」と言いながら家に入れてくれた。
夜中だというのにシャワーまで借りて、これまた借りた村田のTシャツに身を包んで、のんびりと過ごしてる。
村田は同じ小学校の同級生だ。わりと近所に住んでたし、当時は鬼ごっことかドッジボールとか楽しくやり合ってた仲。
小学校の高学年まで仲良くて、学校でも外でもよく連んでたけど、村田が中学で私立に行ったことで離れてしまい、会わなくなった。
卒業式の時に『行かないでー!』なんて泣いて困らせたのを覚えている。