曖昧ハート


「ゴメン。普通にキモいわ」
「怖いって。ホラーだろ」
「いつか殺されそうじゃね?」
「付いてった俺も鳥肌がたったかんね」


私の話を聞いた兄貴たちが、ドン引きした顔でお互いに顔を見合わせる。凍りついて全く笑えない雰囲気。怪談話でも聞いたみたい。

仮にも愛していた人をバケモノ扱いするなんて薄情だとは思う。けど、ここまで来ると恐怖でしかないし、このまま逃げ続けていたら色んな人に迷惑が掛かるから早く何とかしたい。

だから縋るような目を兄貴たちに向けた。聞いたって答えに困るのは分かっているけど、私が考えつくことなんて貴ちゃんにはお見通しな気がするし。

貴ちゃんが苦手に感じている兄貴たちに対処方を聞けば、何かいい案が出て来そうな気がして。


「どうすればいいと思う?」
「どうするって言ってもなー」
「捕まえたところで諦めないだろ、それ」
「むしろ、そうなることを前提で動いてる感じがするし」
「だな。ぎりぎりアウトラインを攻めてきてるよな」
「ボコれば黙るんじゃね?」
「ダメだ。その後、俺らが居ないときに花音を狙おうとしてくるだろ」
「変に手を出したら逆恨みしそうだし」
「花音に何かあってからじゃ遅いしな……」


警官をやっている光弥を中心に“ああでもない、こうでもない”と皆で苦々しく語る。

法で縛ろうが、拳で縛ろうが、ヤツは諦めないし、むしろ余計に執着してくる。

それなら、どうにか心を折るしかないだろう、っていうのが兄貴たちの見解だ。
< 65 / 89 >

この作品をシェア

pagetop