曖昧ハート
「でも、どっち道、このまま何もしなくたっていつかは危険な目に合うでしょ」
向こうが来るのが先か、私が行くのが先かの話。貴ちゃんのことだから、そのうち壁を登ってでも殴りにくるもん。
だったら自分から仕掛ける方がいい。それで解決する可能性があるなら試してみる価値はあると思う。
仮に失敗したってパクられた私物は取り返せるし。グダグダやってるよりは前に進める。
だから“やる”って方向で話を進めた。
とにかく早く貴ちゃんと縁を切って、のんびり村田と宴会をしたい。そんな思いでいっぱいで。
「そうは言ってもな。下手したら監禁ヤンデレコースだぞ」
「こわ。俺、マンションの前まで付いてくわ」
「だったら、いっそ、村田に新しい男役でもやってもらった方が安全じゃね?」
「それ、いいな。望みがないと思ったら諦めるだろ」
戦いにいくと決めた私の隣で兄貴たちが勝手にパーティを組もうとする。
いつの間に連絡先を交換したのか「頼んでみるわ」とスマホまで取り出して、本当に油断も隙もない男め。そこはもう頼むからヤメて欲しい。