曖昧ハート


 「わかった、わかった。村田には頼まねーよ」
 「無理強いしたって暴走しそうだしな」
 「その代わり決行するのは俺が非番の日にしろよ」
 「わかってるよ〜」
 「やばいと思う前に全力ダッシュで逃亡な」


 私の熱意が伝わったらしく、兄貴たちは囲ってた志朗のスマホをテーブルに置き、やれやれと呆れたように鼻で笑った。

 “ほんと、しょうがない妹だな”って視線を交わせ、ニコニコと。

 光弥と志朗に至っては当日にマンションの前まで付いて来てくれるらしい。見張りだ、張り込みだ、とか言って頼もしい。

 5人兄妹の末っ子、女一人。何だかんだ兄貴たちに甘やかされている。


 「とりあえず、それまでに出来ることは全部やっておこうぜ」
 「そうだな。今、住んでる家も引っ越した方がいいだろうし」
 「仕事もどうするか考えないと」
 「友達とか知り合いにも、ちゃんと事情を説明して根回ししておけよ」
 「わかった」


 このあとの行動を決めるべく、長い兄妹会議が始まる。

 あぁ、3年に及んだ私の恋が確かに終わった。それに合わせて3年の間、育んだ愛も消えようとしている。

 既に片方(私の方)は消えちゃったけど。いや、最初から片方しかなかったのなら、もう何も存在しないか。

 恋愛もコインと同じ。裏表一体。2つで1つ。どちらかが変われば、もう一方も変わるのかも知れない。

 そんな風に考えた、太陽の陽が差し込む昼下がり。私たちの話し合う声がずっと実家のリビングに響いていた――。

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