曖昧ハート

 なんで村田?しかも猫連れ。外に連れ出しているなんて珍しい。

 部屋から出ていったのを連れ戻しに来たのかな……。

 それとも動物病院に行ってきた帰りとか?そのわりには2人とも元気な顔だな……、なんて回らない頭でゴチャゴチャ考える。


 そしたら猫が一声鳴いて村田の腕からピョンっと飛び降りた。

 軽やかな足取りで地面に着地し、その衝撃で猫の首輪に付けた鈴が“リンリン”と可愛らしい音を立てる。


 「な、なんで……」
 「うん。ここに居るって花音の兄貴たちから聞いたから。見に来た」
 「いやいやいや」
 「あ、別に頼まれてではないよ。ちゃんと自分の意思で来たから」


 『怒んないであげてね』と、どう考えたってやばい状況なのに村田は眼鏡を外すと呑気な笑顔を私に向けた。


 頼まれてないって何が?兄貴か?兄貴が今日ここに私が行くことを村田に教えたのか?……と、問うような視線を村田に送る。


 そしたら村田は貴ちゃんを見て、溜め息を1つ。外した眼鏡をポケットに仕舞い、猫に“あっち行っとけ”と手の甲を振った。

 村田にベタ惚れな猫は素直に言いつけを守り草むらの方に歩いていく。

 そして村田は再び視線をコチラに戻した瞬間、貴ちゃんが村田を殴った。

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