曖昧ハート


 驚いた周りの住人が何事かと窓を開けて覗いてきたが、2人とも素知らぬ顔だ。

 何?鈴の音?猫の?それで気になって村田の顔を見たがってたの?浮気を疑って?と、私も私でキョトンとしてしまう。


 「そうだね」
 「ほらみろ!」
 「うん。確かに俺の家に来てたけど。それが何?」


 紛れもなく友達だし、友達なんだから泊まりに来ることだってあるじゃん……と、村田は泰然とした態度で貴ちゃんに言った。

 ズルいけど、その辺は事実だし。私も村田の話に乗って口を閉じる。

 ぶつけた怒りを躱された貴ちゃんはお怒りだ。不満気に眉間を寄せる。


 「ねーわ!ただの友達って回数じゃねーだろ!」
 「そんなに怪しむほど何回もあった?」
 「あったしな!ここ1年、何十回も」
 「そっか。じゃあ、それだけ自分が夜中に花音を放り出してたってことだね」
 「はぁ?」
 「花音がうちに来てたのって、夜中に放り出されて行くところがなかったからだし」


 だから悪いのはそっち。いい加減、理解してよ、と村田が溜め息交じりに言う。

 疲れた背中をして“バカの相手は疲れる”と思っていそうだ。
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