曖昧ハート

 「はー…。もういいよ、貴ちゃん」
 「は、」
 「本当にね、無理だから。別れて欲しい」
 「な、んで」
 「もう貴ちゃんは私の大切な人じゃなくなったの」
 「嫌だっ。そんなことを言うなよ、花音……っ」


 さぁ、はよ諦めてくれよ……と思いつつ別れを告げたら、貴ちゃんは悲しげに頭を抱えて地面に突っ伏した。

 この世の終わりみたいな顔をして。


 うんうん。見事なまでのヘタレっぷりだ。村田の放った攻撃(口撃)魔法が存分に効いている。

 それでこその君。ひと暴れした後の賢者タイムだよね。


 「別に私じゃなくてもいいでしょ」
 「無理だって」
 「貴ちゃんにはサーフィン仲間のギャルが居るじゃん」
 「えー。あいつ性格が悪いし、壊滅的に料理が下手だから」
 「じゃ、じゃあ、さっきの子。今どき、あんなあっさりとリアル体験をさせてくれる子なんて貴重だよ」
 「ない。軽いし。あんなん、遊びで充分」
 「なら……、」


 いっそ別の子に気持ちが移ってくれ、と次々に他の子を勧めたが、大真面目な顔で拒否される。
 しかも言うことが、どれもコレも最低。正真正銘ドグズ。

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