曖昧ハート
「何か面白いことになってるし」
「なー。やばいことになってるかと思って隠し玉まで拾って来たのに。ウケるわ」
いったいドコに隠れていたんだか、車で待機していたはずの光弥と志朗が出てきてニヤリと笑う。
その隣には貴ちゃんの浮気相手だったサーフィン仲間のギャルがの姿が。呆然と突っ立って物凄く凍りついた顔で貴ちゃんを見てる。
うわぁ…。いったいドコから見てたんだろう。今、来たって感じじゃないし、顔色からして心の中がヤバそうだ。
兄貴め。拾ってきたって、いったいドコから拾ってきたんだか。
無駄に顔が広いし、そのスキルでどうにか連絡を取り付けたんだろうけど、罪な男だ。
しかも、タイミングの悪いことに、さっき貴ちゃんとヤッてた女の子もマンションから出てきた。
「んもう、貴ちゃん〜。私、どうしたらいいの?帰る?」って、ちょっと不機嫌。
かと思ったら、魂の抜けたギャル子と目が合って、お互い固まってる。これは、さらなる修羅場の予感だ。
でも、私にはもう関係ないし。
「じゃーねー!貴ちゃん。ばーい」
あたふたしている貴ちゃんに手を振り、新しいダーリンと一緒に兄貴たちの元へと向かう。
何か後ろで「待ってくれぇぇぇっ」と叫ぶ声が聞こえたけど、気にせず草むらに隠れていた村田の猫を見つけて招き寄せる。
そっと抱き上げれば、祝福でもしてくれているようにご機嫌で“ニャー“と鳴いた。
少し前までは素っ気なかったのに、早くも彼女だと認めてくれてるらしい。
君ともこれから長い付き合いになるね。と呟き、DV男との戦いは幕を閉じる――。