曖昧ハート
「付き合うまでもなく振られた」
「はい?なんで?」
「思ってたのと違う、会話がつまらない、音ゲーが上手いだけのただのオタクじゃん、って言われた」
「なんじゃそりゃ。辛辣だな〜」
「な。ちょっとヘコんだわ」
お皿を出しながらヘラヘラ笑う村田。私からしてみたらいい男だと思うんだけど。
優しいし、面倒見もいいし、料理も上手いし。見た目も断然あり。
ゲームが上手いのなんて一種の才能みたいなものじゃない。その子は何か違うように感じたのだろうか。よくわからん。
「村田も大変よのぅ」
「ねー」
「そこが村田のいいところなのに」
「だろ?」
「おいおい、調子に乗るな」
ニヤニヤ笑う村田の頭をペシッと叩く。軽く当たった一撃に村田は「痛っ」と言って笑った。
叩いたのに軽く流して全然怒らない。これが貴ちゃんなら鼻血を出すまで殴られてるところだ。
電話に出なかっただけで腕にヒビまで入れられたこともあるもん。
飲み会の最中だったから周りは皆ドン引き。
それに比べて村田は本当に温厚。怒らないんじゃないかとさえ思う。
それとも貴ちゃんが異常なのか。