幼馴染はお医者さん

2.愁くんが担当医?


それからしばらく愁くんとは会えなくて
仕事だけを黙々と頑張った。
やっと仕事にも慣れてきて
プライベートも楽しめるように余裕ができてきた頃、先輩から飲みに誘われた。

重度の喘息もちの私には
よくないアルコール。
だけど最近は
発作も落ち着いてるし薬飲めば
大丈夫だよね...


「はい、私も参加します!」

先輩や同期、6人集まった。
楽しくてついつい2杯目、3杯目と
アルコールに手を出してしまった。

やばい。
酔いが回ってきたのと同時に
呼吸がしにくくなってきた。

「まって、川口さん喘息じゃなかった?
そんなに飲んで大丈夫?」

私の異変に気づいた先輩が声をかけてくれた

「...ゴホッゴホッ大丈夫です。
ちょっとトイレに...」

「はい、ストップ」

トイレに立とうとした瞬間、後ろから腕を掴まれた。

この匂い...

後ろを振り返ると

愁くんがいた。

「なんで?」

「俺もそこで飲み会。」

少し離れたところの席に
たくさんの人たちが飲み会をしていた。
そこにいたんだ...
気づかなかった。

「きりは何をしてんの?
医者にお酒飲んでいいって言われてるの?」

やばい。
愁くんが医者の顔をしてる

...怒られる

「お疲れ様でした。お金は明日払います。今日は失礼します。ごめんなさい」

先輩と同期に別れを告げて
咄嗟に腕を払って
逃げた。

「まて。」


怒られるのが怖い。
あの優しい愁くんに怒られたくない。


急いで店の外に出て
タクシーを拾った。
家の場所を伝えて少し横になった

「...ゴホッゴホッゴホッ」

咳が止まらない。

吸入器...
バッグから出した

「...シュッ」

全然治らない。

何で。


...プルルル


愁くん。

出れない。


「...シュッ」

吸入器を吸っても吸ってもよくならない。

「お客さん大丈夫ですか?」

あまりにも体調悪そうに見えたのか
タクシーの運転手さんが声をかけてくれた。

「...ゴホッゴホッ、大丈夫です。」

「電話ずっと鳴ってますが...」

愁くんからの電話は鳴りっぱなし。

「...ゴホッ、出てくれませんか。ゴホッ」

タクシーを路肩に停めて私の携帯で電話に出てくれた。

発作が止まらないまま愁くんと電話するのは嫌で
運転手さんに頼んだ。


「はい、タクシーの運転手です。お客さんの電話に代わりに出てます。

あ、はい。」

運転手さんがスピーカーにした。
愁くんにいわれたんだろう。

『きり。』

声のトーンがやっぱり怒ってる。

「...ゴホッゴホッ。
ごめんなさい。ゴホッゴホッ」

『吸入は?』

「...ゴホッゴホッ
治らない...ハァハァ」


『運転手さん。すみません。
○○総合病院までその子連れてきてください。』

「...ハァゴホッ
いやだ...ハァゴホッ」

『ダメなのわかってて酒飲んだやつの言うことは聞かない。

タクシーの運転手さん。運んでください。
よろしくお願いします。』


「わかりました。」

運転手さんが車を動かした。

『きり、身体を起こせるなら座れ。』

「...ゴホッゴホッ」

『おい』

「...ゴホッ
わかってるよ。」

向かってるところが怒ってる愁くんのところって考えと行きたくない気持ちと苦しくて発作止めて欲しい気持ちと感情がぐちゃぐちゃになってきた。


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