幼馴染はお医者さん

10分ほど経つとタクシーが病院に着いた。

「運転手さん、ありがとうございました。」

病院前で愁くんがすでに待っていた。

「きり、大丈夫?」

愁くんの声を聞いてなぜだか安心した。
行きたくなかったはずなのに。

会った瞬間安心してしまった。

「もう大丈夫だから。
とりあえず病院入ろう」


愁くんがタクシー代を払ってくれて
そのまま車椅子で病院に入った。


気がつくとベッドの上で横になっていた。

近くにパソコンで作業をしていて
愁くんが私に背中をむけて座っている。


「...愁くん」

「起きた?」

声をかけるとすぐに近くに寄ってきてくれた。
私の腕には点滴に酸素マスク

久しぶりに発作で点滴まで打った気がする。


「なんでお酒を飲んだ」

白衣を着ている愁くん
目を背けたかった。

「...」

「きり!」

怒鳴られた。
びっくりして答えた

「誘われて断れなかった」

「はぁ...きりお前何歳だ。
いい歳して自分の病気と向き合わず
わざと悪くなる行動とってどうする。」

「...ごめんなさい」

「俺いなかったらどうするつもりだった。
はぁ...
今日はもう遅いから1泊していって。
おばさんには俺から連絡しておくから」

「愁くん...明日仕事だからここ7時には出たい」

「は?行かせるわけないだろ。」

「え?」

それだけ言ってまたパソコンの前に戻った。

「愁くん...」


「...愁くん」

いくら話しかけても返事をしてくれない。

怒らせちゃったっぽい...


「...愁くん、ごめんなさい。
次から気をつけるから。
もう迷惑かけないから。怒らないで」


愁くんに無視されるのが怖すぎて
必死に謝った。

やっと私の方を向いてくれた。

「何を気をつけんの?」

「お酒を飲まない...」

「当たり前だろ。」

「怒らないで」

「俺だって怒りたくない。
怒らせるな。明日は俺と家に帰る。わかったか?」

「...うん。
...明後日は?」


愁くんは何も言わずに私を睨みつけた。


「ごめんなさい」


それから愁くんは何も言ってくれず
一晩、病院で過ごした。

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