幼馴染はお医者さん

次の日の朝、
起きると部屋には誰もいなかった。

トイレにも行きたいのに
愁くんが働いている病院ってことしか
情報はなくてあとは何も知らない。

携帯もどこにあるかわからない

そっとその部屋を出た。

綺麗な待合室
診察室がずらりと並んでいる


土曜日の朝だからか待合室には誰もいなくて
人のいる様子がない。



「きり」

「うあ!」

後ろから急に声をかけられて大きい声を出して驚いてしまった。


「なに?勝手に病院出ようと思ってる?」

「そんなこと...
トイレ探してて」

「そこまっすぐいって突き当たり左
終わったらここの部屋戻ってきて。
帰る支度しよう」


帰れるんだ。
嬉しくてるんるんだった。


部屋に戻ると愁くんが
私服に着替えていた。


「ねぇ私のバッグしらない?」

「俺が持ってる。帰りの車で渡す。」

「なんで。」

「早く行くぞ」

愁くんのあとをおって病院を出ると
車が止まっていた。

「これ最近俺の買った愛車。
かっこいいだろ。助手席のって!」

黒い車。
車の良さはわからないが
愁くんが好きそうな車ではある。

愁くんはバイクが好きでよく私を後ろに乗せてツーリングに連れてってくれた。
気分転換になるし楽しかった。

でも車の運転は初めてで少しドキッとした。
しかも助手席。

車でバッグを返してくれた。
その中に見覚えのないポーチが入っていた。

「これなに?」

「薬。誰が見てもわかるようにまとめた。」

「なんで?」

「昨日みたいに発作で倒れたら
他人がきりに処置をしないといけない時があるかもしれない。わかりにくかったからわかりやすいようにしただけ。ぐちゃぐちゃにするなよ。O型。」

そうです。私はO型です。
大雑把でいつも薬ぐちゃぐちゃ。
A型の愁くんは気になったんだろう


あっという間に家に着いてしまった


「お母さんになんて言ったの?」

家の前に着いた途端
お母さんの心配してる顔が思い浮かんだ

「そのままのこと伝えた」

「...」

「大丈夫だから早く家入れ、俺はうちの駐車場に停めてからすぐ行くから」


「...うん」


恐る恐る家に入った。

「...ただいま」

「きり!あんたなにしてるの。
みんな心配してたんだよ。なんでお酒なんか飲んで発作出してるの。病院もサボったり最近、おかしいよきり。」

靴を脱ぐ暇も与えず
頭からツノが生えてるお母さんが出てきた。

「...」

「ねぇ、きり!なんか言いなさい。」


...ガチャ

愁くんが家に入ってきた。

「お邪魔します」

「愁くん、ごめんね。
きりが迷惑かけて。」

「たまたま俺がいてよかった。」

「本当だよ。何考えてるの。しっかりしてよ」


「おばさん、俺がきりにこっぴどく怒ったからもう言わないでやって。
ちゃんと反省もしてるからさ。」

「...そう?ちゃんと反省したの?
ならいいんだけど。
とりあえず中に入って」

愁くんの一言でお母さんの怒りがおさまって
やっと家に入れた。


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