幼馴染はお医者さん
そして今日も全く勝てない
「もっかい。」

「いつまでやんの」

「きりが勝てるまで。」

「ははっ、一生俺には勝てないよ」

「次は絶対勝つ。」


「じゃ次俺が勝ったら俺の言うこと1つ聞け。きりが勝ったらきりの言うこと10個聞いてやる」


「10個も聞いてくれるの?」

「おう、俺に勝てたらな」

いつも本当に惜しいところまでいく。
次こそは勝てると毎回思う。

よし、10個聞いてもらおう

まずは高い焼肉屋さんに連れて行ってもらうでしょ
そしてお寿司屋さんも
あと久しぶりにバイクでドライブにも行きたいなぁ

なんて考えてその勝負にのることにした。


「よし、じゃいくぞ、スタート!」

「絶対きりが勝つ」



...



...


ボロ負け。

いつも惜しいところまで行くのに
今回はあっけなく散った。
え?
もしかしていつも手を抜いてた?

愁くんの本気はもしかしてこれ?
勝てる気が全くしない。


「約束通り俺の言うこと1つ聞いてもらう。」


「...いいよ、焼肉?お寿司?
上限1万まで...にしてください。
給料日前で。」


「何言ってんの。」


「え?」


「俺のお願いは1つ。
俺がきりの担当医になることを承諾して!」


「だからそれは...いやだって...」

「勝負に負けただろ。」


「...」


「詳しくは後でゆっくり話すからとりあえず飯食べろ」


「いらないってば」

思ってもなかったお願いだった
嫌だって言ってるでしょ...


「じゃあ俺の手作り料理をご馳走しようか?」


「もっといらない」

そう、愁くんは何でもできるように思うけど料理だけはできない。

焦げてるか味がないかガムみたいに硬いか。
なんでそうなる?っていう状態でしか
食卓に出てきたことがない。


「おばさんの料理を今から食うか
俺が作る料理食うか。」

選択肢は一つしかない


「お母さんのご飯たべる。」


「よし、降りよう。用意してくれてるよ」
< 17 / 20 >

この作品をシェア

pagetop