幼馴染はお医者さん
家を出て愁くんのバイクの後ろに乗った。
バイクの後ろは慣れたもの。

ヘルメットをかぶらされて
そのまま発車した。


風が気持ちいい
この風が大好き

長くて急な坂を登った先にある公園に着いた。

やっぱり愁くんは私のことをよく知っている。
私はこの公園が大好き。
だけど喘息でこの急な坂を登るのを禁止されている私は自分の足では来ることができない。

だからこうやってたまに愁くんが連れてきてくれたりお母さんやお父さんが車を出してくれる。


その公園からの景色が本当に綺麗なの。
夜になるともっと綺麗。
おうちの灯りひとつひとつに命がある。
みんな生きている。

それを実感できる場所がここ。
落ち着くんだ。


ベンチに座った


「...怖い」

「なにが?」

「お医者さんの愁くんが」

「きりが言うことを聞いてくれたら医者にならずに済むだろ。」

「でも診察したり検査したりするでしょ」


「それが怖いの?今までやってたことと変わらないよ」


「...」

「俺も水曜日が外来だから
来る場所が俺のところに変わるだけ
あとは何も変わらない。何が怖い」

「...もういいよ」


「何か伝えることを諦めないで。
なに?話して。不安なことも全部」


「...」


「きり」


そっから私は何も言わなかった。
治療する気もないし意欲もない
いつまで頑張ればいいのかわからないし
ゴールが見えない今、発作がでて
苦しくても楽になれるならこのまま...
とまで思い始めた。

でもそんなこと言ったら
怒られるだろうし...


言えないよ。

「次の水曜日、待ってるからな。
俺の病院わかるだろ?受付に声かけてくれたらわかるようにしておくから。」


「...」


「来なかったら俺はブチギレる。
言っておくけど今の先生より厳しいぞ。
薬だって毎日飲んだか写真で確認させてもらうから。」

うわっめんどくさ


せっかく好きな場所なのに
全然心が浄化されない。


「はぁ...」

無意識に大きなため息がでて
ブランコにのってこいだ。

「おい、あんまり漕ぐな。発作が出るぞ」

ブランコですらダメと言われるこの人生

本当にうんざり。


降りて何も言わずヘルメットをかぶった

無言の帰りたいアピール


愁くんもすぐにエンジンをかけた。

「帰ろうか。」



家まで送ってもらって愁くんは明日早いからと自分の一人暮らしの家に帰った。


1人で部屋でゆっくりしてると
愁くんからメッセージがきていた

《お疲れ様。きり、頑張ろうな。俺もなるべくきりの要望に応えるようするから。なんでも言って。
発作が出たらポーチの中にある吸入をすること。それでも発作が止まらなかったら俺に電話。仕事中で繋がらなかったらおばさん、おじさん、俺の母さんや親父でもいい。誰かにヘルプすること。薬はちゃんと飲むこと。
頼んだぞ。おやすみ》


はぁ...
なんか本格的に医者と患者の関係になってきた。
愁くん...
私の大好きなお兄ちゃん的存在の愁くんが...

距離を感じた1日だった


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