幼馴染はお医者さん



そーっと玄関からでた。
夏の始まりで昼間は暑くなってきたけど夜はまだ少し肌寒い。
近くのコンビニに寄ってあったかいお茶を買った。

お気に入りの公園までは行けないけど
遊具ひとつもない紫陽花が綺麗なだけの公園
のベンチに座った


火曜日の夜は
酔っ払いもいないし
学生もいないし
1人になるには最適


...ピコン

《きりおきてる?》

愁くんからだ。
こんな遅い時間に何?
明日、他の仕事が入って無しになったとか奇跡ある?

《なに?》

その望みにかけて返信した。


...プルルル
するとすぐ電話がかかってきた。

待って待って。
電話にでたら外なのバレるよね
出れないよ

《起きてるなら出てよ》

《嫌だ》

《3分だけでいいから》

3分?だったら救急車とかパトカーとかうるさい車が通らなかったら
ワンチャンバレない?


...プルルル

「はい。」

公園の端っこまでいってなるべく道路の音が聞こえないようにして電話に出た。

『今どこにいるの?』

「え?」

『家じゃないでしょ』

「なんで?家だよ」

『きりの部屋、電気ついてない。』

あっそうだ部屋を出る時
電気消してきちゃった。

実家に帰ってきたんだ。
最悪だ

私は暗いのが怖くて寝てからタイマーで電気消えるように設定してる
それを知ってる愁くんは
電気が消えてる=部屋にいない
のがお見通しなわけ。

電話に出なければ寝たで済んだけど
出てしまったからバレてしまった


「...」

『どこいるの?』

「言いたくない。3分経ったからじゃあね」

『経ってないだろ。場所いうか俺に怒られるかどっちがいい?』

「何で怒られなきゃいけないの」

『ちゃんと薬持って出てきてんの?
どうせ携帯ひとつで出てきてんじゃないの?こんな寒暖差が激しい日で発作でやすいのに。』


...そうだ。
携帯以外、何も持ってない。
忘れてた。

『どっちか選べ』

愁くんに怒られるのが怖い
でも場所言ったら来て怒られる

どっちも怒られるんじゃん

『早く決めて』

「どっちにしろ怒るでしょ」

『場所言え。なら怒らない』

「本当?」

『おう』

「アジサイが綺麗な公園」

『わかった、すぐ行く』

やっぱり来るよね。
そうだよね。
私の足で15分くらいだし
どうせバイクで5分で来るよ。

愁くんは私のこと何でも知ってる
けど私も同じくらい愁くんのこと知っている
< 23 / 43 >

この作品をシェア

pagetop