幼馴染はお医者さん

上に軽く長袖を羽織って
言われた通り部屋から吸入器取って
家を出た。


「はい」

ヘルメットを私に被せて
バイクを出発させた。


愁くんにしがみついてると熱のせいで
フラフラしてきた。

寝そう...



「おい!寝るなよ。」


...はっ
愁くんの声にびっくりして
ぎゅっとしがみついてる手をきつくした。

そうだ寝ちゃダメだ。
落ちちゃう。


それからすぐ公園に着いた

「おい、寝てたろ」

「...うん」

「身体も暑いし...
ちょっと考えどきだな。」

「...えっ」

「とりあえずベンチに座ろう、
そこの自販機で飲み物買ってくるから」

「コーヒー飲みたい。」

「ダメ。カフェインは今はやめといて」

「...」



愁くんが帰ってきた時に手に持ってたのは
2つの水

「水かよ」

「ははっ、水だ。俺もきりも。
はい!」

冷たい水を渡してくれた

「...ありがとう」


「きり、ここ昔から本当に好きだよな。
なんでここが好き?」

「綺麗じゃない?
ここからの景色。
1つ1つの灯りには命があって
毎日楽しいこと嬉しいこと悔しいこと苦しいこと辛いことたくさん経験してる。いいよね」


「きりもその灯の1つだよ」

「...きりの灯はもう消えかけてるよ」

「なんで?」

愁くんは不思議そうに私の顔を覗き込んだ

今の愁くんなら話してもわかってくれる気がした

「...私さぁ
昔から病院嫌いで治療拒否してたでしょ。
その時に小児科の先生が「小児喘息は大人になったら治るから今だけ頑張ろう」って言った。それを信じてそれならはできるだけ頑張った。なのに大学卒業して就職した。小児科も卒業して大人になった。なのに薬は飲み続けないといけない。発作もまだまだ出るし好きなことできない。
だからさもういいんだ。もう治すの諦めて楽しいかとしたいなーって思ってる」

「そっか...
それは小児科の時の先生がよくないね。
確かに小児喘息は大人になるとよくなるケースもある。けどならない場合も全然ある。
きりはならなかったね。」

「...だから治療するのいいかなーって。疲れたし」

「きりの喘息は治りはしないけどコントロールすればよくはなる。」

「ならないよ」

「なるよ」


「医者の俺ができるって言ってる。
騙されたと思って俺に任せてみ」


「...」


「でも話してくれてありがとう。
きりの気持ちはわかった。
ゆっくり向き合っていけばいいよ」

「...はぁ。」

話しているうちに
頭がフラフラしてきた。

熱のせいだ。

「明日仕事か?」

「...そうだよ」

「じゃあ明日の仕事までに熱下げないとな。今から病院行って点滴打てば下がると思うんだけどどう?」

「いやだ。そういって仕事行かせない作戦でしょう。」


「熱下がったら行ってもいいよ。
今から家帰って明日の朝、熱あったら行かせないよ」

「え...」

「熱高いのに行かせられないでしょ。」


「点滴しても下がらないかもしれないじゃん」

「やってみる価値はあると思うけど...」

「病院は行かないよ?」

「家では点滴できない」

「...」

「大丈夫だよ。明日俺は休みだしずっとそばにいてやるよ。
そんな不安がんな。」

「だって...」

そのまま手を引かれてバイクに乗せられ
ヘルメットを被せられた

「また熱落ち着いたらここにこよう。
今日は帰るぞ」

エンジンをかけて出発した。

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