冷徹無慈悲なCEOは新妻にご執心~この度、夫婦になりました。ただし、お仕事として!~
どこか無邪気に、彼女は小首をかしげてみせた。
「だって……私より格下の女がおいしい思いをしてるなんて許せないと思わない?」
綺麗なバラ色の唇がとんでもなく醜悪にゆがむ。
当然のように言い放った彼女に、咲穂は頭がクラクラするのを感じた。世の中には合理的な理由もなく、ただ気に食わないというだけで他人にこういう態度をとれる人間が存在するのか。
「それに、私にメリットがないってわけでも……」
「え?」
「いいえ、こっちの話。まぁ、個展に行くかどうかはあなたの自由だけど……言いたかったのは私の話は嘘じゃないのよってこと」
昨日と同じように、カツカツとヒールを鳴らして彼女は去っていった。
「行かない。行くわけないじゃない」
咲穂はそうつぶやいて、梨花の残していったチラシをデスクの奥にしまった。
自分が衝動的に六本木に向かってしまわないか、ほんの少し心配だったのだけれどリベタスの仕事に想定外のトラブルが発生し、咲穂は個展どころではなくなった。
「えぇ、冬那さんが怪我?」
「そうなのよ。映画の撮影中にちょっと事故があったみたいで……」
そう説明する理沙子も、聞いている咲穂もすっかり青ざめている。
「それで、彼女は大丈夫なんですか?」
「入院するような大怪我ではないわ。でも困ったことに……右の頬に大きな青痣ができてしまったそうなのよ」
「顔に痣……じゃあ来週の撮影は延期ですか?」
今どきは多少の画像加工は可能だけれど、やはりどこか不自然になるし、なによりせっかくの七森悠哉のメイクが台無しになってしまう。
「だって……私より格下の女がおいしい思いをしてるなんて許せないと思わない?」
綺麗なバラ色の唇がとんでもなく醜悪にゆがむ。
当然のように言い放った彼女に、咲穂は頭がクラクラするのを感じた。世の中には合理的な理由もなく、ただ気に食わないというだけで他人にこういう態度をとれる人間が存在するのか。
「それに、私にメリットがないってわけでも……」
「え?」
「いいえ、こっちの話。まぁ、個展に行くかどうかはあなたの自由だけど……言いたかったのは私の話は嘘じゃないのよってこと」
昨日と同じように、カツカツとヒールを鳴らして彼女は去っていった。
「行かない。行くわけないじゃない」
咲穂はそうつぶやいて、梨花の残していったチラシをデスクの奥にしまった。
自分が衝動的に六本木に向かってしまわないか、ほんの少し心配だったのだけれどリベタスの仕事に想定外のトラブルが発生し、咲穂は個展どころではなくなった。
「えぇ、冬那さんが怪我?」
「そうなのよ。映画の撮影中にちょっと事故があったみたいで……」
そう説明する理沙子も、聞いている咲穂もすっかり青ざめている。
「それで、彼女は大丈夫なんですか?」
「入院するような大怪我ではないわ。でも困ったことに……右の頬に大きな青痣ができてしまったそうなのよ」
「顔に痣……じゃあ来週の撮影は延期ですか?」
今どきは多少の画像加工は可能だけれど、やはりどこか不自然になるし、なによりせっかくの七森悠哉のメイクが台無しになってしまう。