冷徹無慈悲なCEOは新妻にご執心~この度、夫婦になりました。ただし、お仕事として!~
「あ、あの。七森さんは滝川翠さんって画家の女性をご存知ですか?」
咲穂はどこかで、すべて梨花のでっちあげであることを期待していたのかもしれない。彼女なら、ありえない話でもないと思うから。
でも、どことなく気まずそうに視線をそらした悠哉の表情でそうではないことを確認する。
「うん、まぁ。櫂の許嫁だった女性だね」
想像どおりの言葉、だけど想像以上の鋭さで咲穂の胸をえぐった。
「わざわざ僕に聞くってことは、櫂は彼女のことを咲穂ちゃんにきちんと説明していないってこと?」
悠哉はおっとりしているのに、いつも妙に鋭い。
「く、詳しいことは……」
本当はなにも聞いていない。けれどそれを言ったら、悠哉はなにも教えてくれなくなると思って卑怯な嘘をついた。
「そうか。まぁ奥さんとしては、そりゃ気になるよね。けど、ふたりが破局したのって……たしか十年近く前だよ」
彼は優しく目を細める。
「あまりに昔のことだから、櫂も話す必要ないと思ったんじゃないかな?」
(本当にそれだけ? ずっと好きだったんじゃないのかな。もしかしたら、今も彼女と一緒に……)
不安と動揺が顔に出てしまいそうになって、咲穂は慌ててブンブンと頭を振る。
「そ、そうですよね。ほんの少し気になっただけで、深い意味はないんです」
「……咲穂ちゃんは嘘が下手だね」
静かに落ちてきた悠哉の声に、咲穂は弾かれたように顔をあげる。
「ほら。不安でたまらないって顔してる」
彼のヘーゼルの瞳は、まるですべてを見通しているみたいに静かだ。
「最近の話ならともかく、ずっと昔の許嫁。どうしてそんなに心配する必要があるの?」
咲穂はどこかで、すべて梨花のでっちあげであることを期待していたのかもしれない。彼女なら、ありえない話でもないと思うから。
でも、どことなく気まずそうに視線をそらした悠哉の表情でそうではないことを確認する。
「うん、まぁ。櫂の許嫁だった女性だね」
想像どおりの言葉、だけど想像以上の鋭さで咲穂の胸をえぐった。
「わざわざ僕に聞くってことは、櫂は彼女のことを咲穂ちゃんにきちんと説明していないってこと?」
悠哉はおっとりしているのに、いつも妙に鋭い。
「く、詳しいことは……」
本当はなにも聞いていない。けれどそれを言ったら、悠哉はなにも教えてくれなくなると思って卑怯な嘘をついた。
「そうか。まぁ奥さんとしては、そりゃ気になるよね。けど、ふたりが破局したのって……たしか十年近く前だよ」
彼は優しく目を細める。
「あまりに昔のことだから、櫂も話す必要ないと思ったんじゃないかな?」
(本当にそれだけ? ずっと好きだったんじゃないのかな。もしかしたら、今も彼女と一緒に……)
不安と動揺が顔に出てしまいそうになって、咲穂は慌ててブンブンと頭を振る。
「そ、そうですよね。ほんの少し気になっただけで、深い意味はないんです」
「……咲穂ちゃんは嘘が下手だね」
静かに落ちてきた悠哉の声に、咲穂は弾かれたように顔をあげる。
「ほら。不安でたまらないって顔してる」
彼のヘーゼルの瞳は、まるですべてを見通しているみたいに静かだ。
「最近の話ならともかく、ずっと昔の許嫁。どうしてそんなに心配する必要があるの?」