冷徹無慈悲なCEOは新妻にご執心~この度、夫婦になりました。ただし、お仕事として!~
 咲穂側のメリット。実家の酒屋の件は、情報をつかめなかったのか、それともあえて伏せたのか記事には記載されてない。咲穂も仕事で名をあげるため利害が一致したのでは?という記者の推測が書かれているだけだ。たしかにこれでは、塔子の言うような見方をされて咲穂もバッシングされるだろう。

(それだけは……絶対に避けなければ)

 櫂は強く、こぶしを握った。

 彼女の熱意と才能、そしてあの……花がほころぶような笑顔。

(俺のCEOの地位などどうでもいい。咲穂だけは、守りたい)

 その瞳に強い光を宿して、櫂はスッと立ちあがった。

「少し時間をください。事態を収束させ、リベタスは必ず成功させてみせますので」
「ふぅん」

 塔子と櫂の視線がぶつかり、バチバチと火花が散る。

「いいわ。その代わり、その約束が果たせなかったときは責任を取ってもらうわよ」

 その日の夕方、櫂は一本の電話を受けた。

「話したいことがあるんだけど、ちょっと出てこられない?」

 悠哉だった。いつもどおりの柔らかな声の奥に、強い覚悟のようなものが感じられた。

「あぁ、俺もお前と話したいと思ってたところだ」

 本社ビルからほど近い、個室のあるホテルラウンジで彼と落ち合う。この場所を選んだのは、あまり人に聞かれたくない話になるだろうと予想がついたからだ。

「まず、CM撮影の件では色々と迷惑をかけて申し訳なかったな。ありがとう」

 櫂は撮影に立ち会えなかったが、冬那の怪我した場所をうまく避けたうえでいい映像が撮れたと報告を受けている。彼のおかげにほかならないだろう。

「あぁ、大丈夫。むしろ当初の案よりいい絵が撮れたから、期待しててよ」
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