冷徹無慈悲なCEOは新妻にご執心~この度、夫婦になりました。ただし、お仕事として!~
 夫婦という関係に自分は甘えすぎていたのだ。明確な言葉などなくても伝わるはず、ともに暮らしていれば咲穂の気持ちも育ってくれるだろうと。

 思いは言葉にしなければ伝わらない。

〝咲穂を愛している。だから、君の愛が欲しい〟

 そう、言うべきだったのだ。

 愕然としている櫂に、悠哉は呆れたため息を落とす。

「咲穂ちゃんはまだ、櫂の愛情を百パーセントで信じきれていない。俺の目にはそう映った。悪いけど、わずかでも勝ち目があるなら全力でいかせてもらうよ」

 悠哉はゆっくりと席を立つ。

「今日は、その宣戦布告をしに来たんだ」

 櫂もまた、彼を見返す。

「わかった。悠哉は大切なビジネスパートナーで親友だ。だが、咲穂は……彼女だけは、誰にも譲れない。俺も全力で闘うつもりだ」

 悠哉は白い歯を見せて笑った。

「上等だ」
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