冷徹無慈悲なCEOは新妻にご執心~この度、夫婦になりました。ただし、お仕事として!~
「あっ」

 デスクの上のスマホが振動して着信を知らせる。上司の理沙子からだ。

「おつかれさまです、出水です」

 返ってきた彼女の声は暗く、沈んだものだった。

「……はい、承知しました」

 今夜のパーティーも欠席でお願いしたいという連絡だった。予想していたことではあるけれど、やはり少し落ち込む。

『本当にごめんね。まだ、社内も混乱していて』

 ためらいがちに言葉を選びながら、理沙子が説明してくれる。

 取引先などの関係各位からはひっきりなしの問い合わせ、社のお客さま窓口には『憧れの夫婦が宣伝するブランドだと楽しみにしていたのに、失望した』というような非難の声が届いており、チームもいまだ対応に追われている状況らしい。

「多大なご迷惑をおかけして、本当に申し訳ございません」

 電話なので見えないとわかりつつも、咲穂は深々と頭をさげる。

(忙しい時期に戦力になれないばかりか、仕事を増やしてしまって本当に情けない)
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