冷徹無慈悲なCEOは新妻にご執心~この度、夫婦になりました。ただし、お仕事として!~
エピローグ
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 それからひと月。無事に発売日を迎えたリベタスは売上も評判も絶好調。櫂は自身に課せられていた最初のミッションをしっかりと達成した。ぐうの音も出ない結果を示されて、櫂の反対勢力だった役員たちもすっかりおとなしくなっている。

 そして今日、ある人物に呼び出されてふたりは美津谷本家を訪れた。応接間のソファに塔子、梨花、潤も神妙な顔つきで座っている。

 全員が揃ったのを確認してから、彼――櫂の父親である美津谷智仁(ともひと)が重い口を開いた。

「まずは、こうして集まってもらったことに礼を言おう。この場にいる全員で、今後について話し合いたい」

 その言葉にかぶせるように喋り出したのは塔子だ。

「誤解ですわ! 私が櫂さんを蹴落とそうとしているだなんて……いったい誰がそんな話をあなたに?」

 よほど動揺しているのか、塔子の目はせわしなく泳いでいる。

「――信頼できる人物からの情報だよ。塔子、私は『日本法人は櫂に任せる。君にはそのサポートを』と伝えていたはずだ。君はそれにイエスと答えたよな?」
「えぇ。もちろん、全力で櫂さんをサポートしていますよ」

 櫂本人を前にして、ここまで白々しい嘘がつけるとは……咲穂は呆れて言葉も出ない。

「潤を推す派閥を組織し、櫂のブレーンを左遷しようとする。あげく、大事な新ブランドの発売前に週刊誌にろくでもない記事を出させる。それが、君のサポートなのか?」

 決して声を荒らげたりはしないが、彼の怒りと失望はその瞳にしっかりと表れている。

 智仁はすべてを知っているようだった。塔子はいまいましそうに親指を噛み、それからキッと櫂をにらむ。

「全部、櫂さんの策略だわ。そこまでして、私と潤を美津谷家から追い出したいの?」

 塔子はもう表情を取り繕うことすらせずに、憎悪をむき出しにしてわめき散らす。

「そうなんでしょう? あなたが智仁さんに告げ口したのね」
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