冷徹無慈悲なCEOは新妻にご執心~この度、夫婦になりました。ただし、お仕事として!~
「そんな急に! 私はどうしたらいいのよ」
潤は梨花の手をそっと振りほどくと、ジャケットのポケットから白い紙を取り出して彼女に渡す。
「なによ、これ……離婚届?」
あまりに事態に、梨花は目を白黒させている。
「俺はもう梨花を〝御曹司の妻〟でいさせてあげられない。だから、離婚しよう」
「え、え……」
梨花は困惑している様子だが、残念ながら潤の決意はみじんも揺らがないようだ。
ずっと黙っていた櫂がここで口を挟む。
「これで、もうごまかせないとわかったでしょう? 今回の顛末をあらためて確認させてください」
観念したのか、塔子も梨花も自分たちのしたことを白状した。事の経緯は、すべて予想どおりのものだった。
櫂と咲穂が共演したオープニングCMの評判もよく、このままではリベタスは大成功をおさめてしまうとふたりは焦った。どうにか邪魔しようと、あれこれ作戦を考える。翠の話を咲穂に吹き込むことも、役員人事も、そのうちのひとつ。
翠の話をして咲穂を揺さぶろうという策は、梨花の発案だったようだ。
「ほかの女の影をちらつかせれば、あなたたちの関係にヒビが入ると思ったのよ。夫婦共演で話題になったのに、不仲説が流れればリベタスのイメージもダウンするでしょう。だから……」
自身の思惑について、梨花はボソボソと説明する。
「あ、そういえば……」
彼女と話をしたときのことが咲穂の脳裏に蘇る。
『それに、私にメリットがないってわけでも……』
彼女はそんな言葉を残していた。
(リベタスが失敗すれば、櫂さんは失脚する。それが梨花さんのメリットだったのね)
潤は梨花の手をそっと振りほどくと、ジャケットのポケットから白い紙を取り出して彼女に渡す。
「なによ、これ……離婚届?」
あまりに事態に、梨花は目を白黒させている。
「俺はもう梨花を〝御曹司の妻〟でいさせてあげられない。だから、離婚しよう」
「え、え……」
梨花は困惑している様子だが、残念ながら潤の決意はみじんも揺らがないようだ。
ずっと黙っていた櫂がここで口を挟む。
「これで、もうごまかせないとわかったでしょう? 今回の顛末をあらためて確認させてください」
観念したのか、塔子も梨花も自分たちのしたことを白状した。事の経緯は、すべて予想どおりのものだった。
櫂と咲穂が共演したオープニングCMの評判もよく、このままではリベタスは大成功をおさめてしまうとふたりは焦った。どうにか邪魔しようと、あれこれ作戦を考える。翠の話を咲穂に吹き込むことも、役員人事も、そのうちのひとつ。
翠の話をして咲穂を揺さぶろうという策は、梨花の発案だったようだ。
「ほかの女の影をちらつかせれば、あなたたちの関係にヒビが入ると思ったのよ。夫婦共演で話題になったのに、不仲説が流れればリベタスのイメージもダウンするでしょう。だから……」
自身の思惑について、梨花はボソボソと説明する。
「あ、そういえば……」
彼女と話をしたときのことが咲穂の脳裏に蘇る。
『それに、私にメリットがないってわけでも……』
彼女はそんな言葉を残していた。
(リベタスが失敗すれば、櫂さんは失脚する。それが梨花さんのメリットだったのね)