冷徹無慈悲なCEOは新妻にご執心~この度、夫婦になりました。ただし、お仕事として!~
安直だが、ある意味彼女らしい思考回路でもある。
そして、咲穂も予想していたとおり悠哉との会話は盗み聞きされていた。
「あそこに梨花さんがいたとは、想像もしていなかったです」
「それは――」
梨花は咲穂が翠の個展に行ったかどうか気になって、探りを入れようとしていたらしい。そこで偶然、咲穂と悠哉の会話を聞いた。
ようするに週刊誌に告発をした匿名の社員は梨花で、彼女にそうするよう指示をしたのは塔子だった。
すべてを聞き終えた智仁が決意を秘めた表情で顔をあげる。
「あらためて、伝えておこう。私の後継者には櫂を指名する」
自身の出した結論を告げたあとで、彼は塔子を一瞥した。
「塔子の持つMTY関連各社の株はすべて没収させてもらう。君は今後一切、経営に口を出さないでくれ。それができないなら離婚だ」
「な、私を誰だと……久我の娘にそんな扱い……許されると思っているの?」
「では今すぐに離婚しようか? 美津谷はまったく困らないからな」
先に塔子たちが去り、櫂と咲穂と智仁の三人になった。
智仁は深々と櫂に頭をさげる。
「多忙を理由に家庭をかえりみず、家族がこんなふうになっていることにも気づかずに申し訳なかった。櫂にも潤にも、長くつらい思いをさせてしまった」
「潤はきっとここから、自分の人生を取り戻す。あいつなら大丈夫だと思いますよ」
櫂は明るい声でそう言った。それから、隣の咲穂の肩を優しく抱き寄せる。
「それに俺も。彼女との温かい家庭があるから、なにが起きても大丈夫です」
「……そうか」
智仁は安堵したように口元を緩め、咲穂に顔を向けた。
そして、咲穂も予想していたとおり悠哉との会話は盗み聞きされていた。
「あそこに梨花さんがいたとは、想像もしていなかったです」
「それは――」
梨花は咲穂が翠の個展に行ったかどうか気になって、探りを入れようとしていたらしい。そこで偶然、咲穂と悠哉の会話を聞いた。
ようするに週刊誌に告発をした匿名の社員は梨花で、彼女にそうするよう指示をしたのは塔子だった。
すべてを聞き終えた智仁が決意を秘めた表情で顔をあげる。
「あらためて、伝えておこう。私の後継者には櫂を指名する」
自身の出した結論を告げたあとで、彼は塔子を一瞥した。
「塔子の持つMTY関連各社の株はすべて没収させてもらう。君は今後一切、経営に口を出さないでくれ。それができないなら離婚だ」
「な、私を誰だと……久我の娘にそんな扱い……許されると思っているの?」
「では今すぐに離婚しようか? 美津谷はまったく困らないからな」
先に塔子たちが去り、櫂と咲穂と智仁の三人になった。
智仁は深々と櫂に頭をさげる。
「多忙を理由に家庭をかえりみず、家族がこんなふうになっていることにも気づかずに申し訳なかった。櫂にも潤にも、長くつらい思いをさせてしまった」
「潤はきっとここから、自分の人生を取り戻す。あいつなら大丈夫だと思いますよ」
櫂は明るい声でそう言った。それから、隣の咲穂の肩を優しく抱き寄せる。
「それに俺も。彼女との温かい家庭があるから、なにが起きても大丈夫です」
「……そうか」
智仁は安堵したように口元を緩め、咲穂に顔を向けた。