冷徹無慈悲なCEOは新妻にご執心~この度、夫婦になりました。ただし、お仕事として!~
「あ、でも咲穂ちゃんのことは覚えた。好みのタイプだから! いつか私の絵のモデルになってくれる?」
「はい、私でよければ」
櫂が翠に会いに行った理由、それは潤の未来のためだった。彼が好きな絵画の道に進めるように――。
『潤には熱意も才能もあるのに一度もチャレンジしないままで本当にいいのかって、ずっと考えていたんだよ。兄として、なにかしてやれることはないのかって……』
美津谷の名に苦しめられることはあっても、櫂は自分の仕事が好きで望んでやっている。でも、潤はそうじゃない。美津谷家に道を閉ざされてしまっているんじゃないか。櫂はずっと、それを気に病んでいたそうだ。そんなときに翠から連絡をもらった。
「私はこのとおりの性格でしょう? アトリエの雑務を手伝ってくれる人にすぐ逃げられちゃって。すごく困ってるときに、ふと昔見た潤くんの絵を思い出したのよ。ああいう絵を描く人間となら、きっと気が合うと思って!」
翠は潤に狙いを定めた理由をそんなふうに説明した。つまり、翠のアトリエを手伝いながら、本格的に絵の勉強をしないか?という誘いだ。
「……気のせいじゃないといいんだが」
櫂は心配そうに眉根を寄せた。でも潤は、理由はどうあれ翠に認めてもらえたことが誇らしいのだろう。彼女の隣で満足そうにほほ笑んでいる。
潤のこの決断に対して、塔子は最後まで『潤を美津谷家から追い出すために、櫂がそそのかしたんだ』と恨みごとを言っていたが……潤の晴れやかな表情を見れば、彼本人はそんなふうに思ってなどいないとわかる。
(潤さんを思う櫂さんの気持ち、伝わってよかった)
「はい、私でよければ」
櫂が翠に会いに行った理由、それは潤の未来のためだった。彼が好きな絵画の道に進めるように――。
『潤には熱意も才能もあるのに一度もチャレンジしないままで本当にいいのかって、ずっと考えていたんだよ。兄として、なにかしてやれることはないのかって……』
美津谷の名に苦しめられることはあっても、櫂は自分の仕事が好きで望んでやっている。でも、潤はそうじゃない。美津谷家に道を閉ざされてしまっているんじゃないか。櫂はずっと、それを気に病んでいたそうだ。そんなときに翠から連絡をもらった。
「私はこのとおりの性格でしょう? アトリエの雑務を手伝ってくれる人にすぐ逃げられちゃって。すごく困ってるときに、ふと昔見た潤くんの絵を思い出したのよ。ああいう絵を描く人間となら、きっと気が合うと思って!」
翠は潤に狙いを定めた理由をそんなふうに説明した。つまり、翠のアトリエを手伝いながら、本格的に絵の勉強をしないか?という誘いだ。
「……気のせいじゃないといいんだが」
櫂は心配そうに眉根を寄せた。でも潤は、理由はどうあれ翠に認めてもらえたことが誇らしいのだろう。彼女の隣で満足そうにほほ笑んでいる。
潤のこの決断に対して、塔子は最後まで『潤を美津谷家から追い出すために、櫂がそそのかしたんだ』と恨みごとを言っていたが……潤の晴れやかな表情を見れば、彼本人はそんなふうに思ってなどいないとわかる。
(潤さんを思う櫂さんの気持ち、伝わってよかった)